見た目の話

ちっちゃい頃、シャレになんないくらいのブスでした。

顔はパンパンで、猫背で、一重で、メガネで、美容師さんが一生懸命キレイに切ってくれたはずの髪はいつもボサボサでした。洗濯のしすぎでヨレッッヨレの真っ黒なパーカーとズボンしか持ってませんでした。指を噛む癖があったから爪はいつもボロボロで、一日の半分はどっかの指先から血が出てました。大人になるにつれて身体は痩せていったけれど、それ以外は全部全部相変わらずでした。

私は私の見た目が不美人であることを知っていました。保育園の頃から冗談っぽく〇〇ちゃんは目が小さいね、太ってる、一重だ、と親戚中から言われてきたからです。別に気にしてなかった。全部マジでその通りで、それは青色を見て「青色だね」って言ってるようなもんじゃないですか。青色……ですね……と同じテンションで、私は私がブスであると受け止めていました。

私は服を選ぶのが大嫌いでした。ショッピングモールなどに行くと、母が私に「この服はどう？」と優しく聞きます。私は黙って首を横に振ります。それを何回も何回も何回も何回も何回も繰り返すうち、母も私も不機嫌になっていって、お互いにイライラしながら適当に数枚の服を買ってもらうのが常だったのを覚えています。それでも自分からこんな服が良い、こういう雰囲気の服が好き、なんて絶対に言いませんでした。ブスが服を欲しがるなんて、つまりは自分を良く見せようだなんて滑稽だからです。私は自分がブスだと弁えていたけど、だからこそバカにされたくなかった。このブス、ブスのくせに可愛くなりたいって思ってるんだって誰にも思わせたくなかった。私はブスです、分を弁えたブスです。それは怒りに近い恥を伴った自認でした。

さて、そこから数年経ち、高校の頃アイプチをしてみました。青色のボトルのノリタイプのアイプチ。そのときから人生が変わりました。「〇〇、今日、何、アイプチしてるん？」「そやけど、なに？」みたいな会話をしたのを覚えています。見た目が変わるだけでなく、自分が可愛くありたいと思っていることを認めた日になりました。そして、まぁ裏ではなんか思ってたかもしれませんけど、とにかく私の友人はそれに何も言いませんでした。そなん。〇〇、今日、アイプチなんや。おわり。おわり！！？？？な〜〜〜〜〜んだ、私も可愛くなりたいって思って良かったんかい。私はアイプチして、化粧水と乳液を覚えて、眉毛を整えるようになりました。洗い流さないヘアトリートメントを買ったり、爪にベースコートを塗って爪を噛む癖を治そうとしたりしました。

大学に入る少し前から化粧を始めましたが、その時自分は化粧映えする顔だと知りました。毎日毎日毎日毎日毎日毎日化粧して研究して、新しい環境では「すごい、美人ですね」「〇〇さん、すごく綺麗だから覚えてた」みたいなことをよく初対面で言ってもらいます。その言葉が、単に褒め言葉であるというだけでなく、可愛くなりたいって思い続けてた私の22年を救う言葉だと発した人は知りません。私も別に言う気はないので、ニヤッと笑って「よく言われます」と返します。今の私の見た目は、美しいからです。